ふたたびLMS(ラーニングマネジメントシステム)について。数多のLMSについて精通し、理想形について日々思いを巡らせている前川さんに再び話を伺いました。
講師
前川英之さん
当日の様子





メモ
eラーニングを受講しない理由は?
- 受講料が高い
- 縁がない(受講したい内容がeラーニングにない)
- 目的や刺激がない(会社からやれと言われるだけ)
つまらない理由は?
- コンテンツの内容。
- LMSの使い勝手の悪さが、コンテンツの内容理解に悪影響を及ぼすことはある。
- シリーズものの講義受講はモチベーションが長く続かない、それはLMSのせいでは?
システムの使いづらさ
本と比較すると、LMSは自分が入力するスペースが圧倒的に少ない。
サンデル教授の「白熱教室」
- ライブが売りなのに、編集したビデオでも面白い。
⇒「本当に」面白いコンテンツを持っている人に、eラーニングはかなわない。 - でも全部見た?見てる人はあまり多くない。
⇒継続的な学習のためにはプラットフォームの機能も重要。
鶏?卵?
- コンテンツを最適に配信するために、LMSが作られる。
- 汎用性を高めるためには、LMSをベースにコンテンツを作る。
eラーニングの強みとすべき主軸は「継続的な学習」
単発学習はeラーニングシステムでなくとも良い。
⇒それは閲覧履歴の管理さえできれば良い(IMSの考え方)。
とあるオンライン学習
- ライブ配信講義のために、事前に数回のオンデマンドeラーニングを提供する。
- 受講状況の善し悪しによって、メールなどのタッピングサポートを(人の手を介して)行っている。
- それでもリアルと比べると学習効果は少し落ちる
- コミュニケーション性が弱かったりするため。
←FBのグループや5人組のような制度等でフォローアップ。
継続的な学習
製薬業界においては「継続的な学習」がそもそも必須。
⇒継続的な学習をeラーニングで提供する際には、メンターなどの「人のぬくもり」が必ずないと、効果が出ない。
学習履歴
熊本大学は、学んだ結果(eポートフォリオ的なもの)を個人に帰属させ、持ち運び可能なようにしているため、学習効果は高い
⇒製薬業界のMR資格はその思想がある。
学習効果
集合研修で得られる学びはせいぜい3割。7割はOJTから。
⇒研修の代替として提供されるeラーニング、という観点からすると、eラーニングで得られる学びは「1割程度」。
eラーニングで担うべきこと
- 経年でノウハウを蓄積していくシステム(ポートフォリオ)が望まれる。
- 製薬業界は2~3年毎に教科書が改訂される。その改訂履歴や重要ポイントをログ化できると良い。
ソーシャルリーディング
- 書籍の著作権は大きな障壁
- 読者が「必要な章」を要求するようなスキームがあると良い(書籍をwikipedia的に創り上げていくイメージ)
継続的な学習をサポートするシステムとは
LMSが担う場としては「学校や教室」という【場】。
eラーニング<集合研修、と言われる理由
- ライブ感による学習効果
- リアルな場に集合することによる熱気
海外でeラーニングが流行っている理由
- 韓国~「超」学歴社会
- アメリカ~国土の広さ(一堂に会せない)
⇒評価制度にしっかりeラーニング受講履歴が組み込まれてる。
⇒USでeラーニング教材を作成することに大きなインセンティブがある
~ドネーション、無形の評価
日本の(社員)教育
終身雇用制に基づく「緩やかな教育」が思想の背景にある
⇒eラーニング先進国は「eラーニング受講結果」に対するフォローアップ(インセンティブ、人事評価、タレントマネジメント)がしっかり制度化している。
←日本は「eラーニングシステムの効果的な運用」が制度的にへたくそなのでは(人事担当が業務をラクしたい/受講者の時間を効果的に使ってもらいたい、といった大きな違い)。
コミュニケーション機能
- 既存のLMSにも掲示板等のコミュニケーション機能は存在する。
⇒コミュニケーションと学習コンテンツが切り分けられている - ニコ動のリアルタイムメッセージは学びとして結構有用では?
⇒学習している教材にダイレクトに紐づいたスレッドであることが有用
⇒デジハリさんは既に実施している!?
仮説
就業時間がもう少し減れば、人は学ぶのでは?
⇒日本人は忙しい、という仮説(仕事の効率性が低い)
←北欧は給与水準は低いが、時間はあるので学びに費やす
感想・コメント

出版はコンテンツありきだが、コンテンツを取り巻く環境にもフォーカスする必要がある、という仮説の可能性が見えた。

eラーニングコンテンツの向き不向きについて考えたいと思った。

eラーニングに手離れを求めるのは難しいことに気付いた。

「eラーニング」というスキームを離れれば、業界はまだいける。

理想のeラーニングシステムは、今はまだ売れない。その前提を踏まえ、理想を考えてみたいと思った。

今後のeラーニングの方向性が徐々にクリアになってきた。
2011年7月22日 於:丸ビル