人生で1,2番目に大きい買い物と言われる、住宅。賃貸が良いのか、持ち家が良いのか、戸建てか、マンションか、主体的に学ぼうとしないとなかなか知ることができません。
そこで、住宅業界に詳しい甘利さんに業界について解説していただきました。
講師
甘利由照さん
当日の様子


メモ
(住宅ではなく)建設業界について
- GNP540兆のうち、建設は今43兆くらい(10%切っている)。
- ただし、雇用を生みやすい産業。
建設の工事の種類
- 28種類。そのうち、スーパーゼネコン(売上1兆以上)、ゼネコンは全ての工事種類を有する。
- 許認可元は都道府県と国とで異なる。
(不動産業界になると許認可の種類は倍以上になる)
住宅ビジネスは法律に基づいたビジネス
- 建築基準法に基づいている。
- ほかにも消防法、民法、などなどでがんじがらめ。
日本の住宅の耐震レベル
- 基準の厳しさは世界一。
- 1978年、宮城県沖地震後に抜本的見直しを実施。
- 1981年、新耐震基準
⇒ここから根本は変わってない。
⇒確認申請が1981年以降の物件の方がより安全。 - 1995年、阪神大震災を元に、耐震改修促進法が施行。
- 2005年、姉歯事件
⇒耐震偽装問題により規制強化
耐震工法
- 耐震構造 揺れた時に頑張れ!
⇒地震が起きた時に「その中にいれる(倒壊を防ぐ)」基準
⇒一般向け - 制振構造 高層部と下部の揺れをぶつける(高層マンション)
- 免震構造 基礎に免震装置を入れる。
⇒コスト高
法隆寺の五重塔
- 世界的な耐震の理想形。スカイツリーも同様の構造(心柱)。
- 古の高層建築物で「倒れた」事例はあまりなく「燃えて」なくなった。
購入か賃貸か
- 購入~満足度、自由度高、資産
- 賃貸~ライフスタイルに柔軟(災害時等)、メンテ不要
購入の方が微妙?
- 「投資」として考えると、「住宅の購入」という選択肢は微妙
⇒日本の住宅は「買った時点から価値が下がる」
⇒バブル期にアマチュアが大量参入したことが要因。
⇒財務省が耐用年数を規定している(マンション60年償却等) - 3~40年住むと購入でも1,000万くらいの追加コストが必要
⇒日本人はメンテナンスをあんまりしない。
(サッシ等は「半値の5がけ」が実態~メンテナンスに利益が出ないため、材料費で稼ぐ体質になっている)
購入、賃貸、実際どっち?
- 実際はほとんど生涯出費は変わらない
⇒「自分が何を求めているか」という基準が大事では。
購入/賃貸、どういう基準で考える?
- 会社への移動時間
- 結婚等のライフステージの変化
⇒これら価値観は状況に応じて随時変化する。
資産という観点では「マンション」が優位
- 資産は家屋ではなく土地
- マンションは売れる可能性がある
「満足感」という点では「購入」の方が高い
- カスタマイズ性が高い点がポイント。
日本の住宅建設は不透明
- 欧米ではDIYでプロもアマチュアも買う。
⇒日本はブラックボックス
坪単位での考え方は実際微妙?
- キッチン、水まわりが一番カネがかかる。
⇒実際に住む人の数が重要で、面積はそこまで大きなコスト要因ではない?
住宅業界は、新築ではなく「リフォーム」にシフト
- 課題は「住民の賛同(4/5の賛成)を得られるか」※法律
建築工法
- 在来工法:日本で最も主流。
⇒梁と柱とすじかい
⇒風土的にマッチしている(夏の暑さを凌ぐ。冬は着込め) - ツーバイフォー工法:欧米の方法。ここ40年くらいの技術。
⇒耐震的にかなり頑丈。 - ⇒密閉度が高いため、カビが生えやすい。
お願いした工務店が潰れたら?
- 住宅完成保証制度
⇒損失した差額を保証したり継続して工事する会社をあっせんする。住宅保証機構を始め、いくつかの団体が実施。
木造の方がいいんじゃない?
- 火事の際でも「崩れるまでの時間」が、実は他よりも長い。
- 木もいいわけではない。土壌汚染が進んでおり、木が有害物質を出してします。
住宅において、かっこいいものは体に悪い。
- 例:フォースター規制はホルムアルデヒドだけが対象
⇒アセトアルデヒドは規制されない。ホルムアルデヒドよりよっぽどタチが悪い
感想・コメント

売る側の話と実態とのギャップが見えた。

目から鱗。「眼に見えないもの」がわかって良かった。

家に対する考えが変わった。「カッコヨサ」ではなく「住みたい家」を考えるコトが重要だとわかった。

賃貸?買う?という基準ではない知識を得られた。

社会にいろんなしがらみがあるんだなぁ。

住宅、という1テーマで、多角的な観点で考えるポイントがいくつもあったことが面白かった。
2012年3月2日 於:エイムデザイン研究所様オフィス