スマートフォンの普及に伴い、ペーパーメディアの凋落が取り沙汰されています。そこで改めて、出版業界について考えてみたいと思い、2012年に出版されてからビジネス書の分野でいまだに話題継続沸騰中の「ビジネスモデル・ジェネレーション(BMG)」のご担当者、翔泳社の栗原茂さんを講師に迎え、これからの出版をディスカッションを交え考えてみました。
BMGとは
- どのように価値を創造し顧客に届けるかを論理的に定義した書籍
- BMGは作り方自体がイノベーション
- メイン著者5名+470名の共著者
- 普通の出版はでたとこ勝負
- BMG~19冊のしたがき+8冊のプロトタイプと、スモールスタートで時間をかけて完成した
- 現時点で5万部(2400円価格帯ではベストセラー)
- ビジネスアイデアからビジネスモデルを検討する過程にBMGを用いることで、仮説や検証を迅速に行える。
イノベーションとは
- プロダクト=製品、モノ
- プロセス=組織、業務
- ビジネスモデル=価値提供の仕組み
ビジネスモデルキャンバスの価値とは
- 様々なポジションの人が共通言語をもとに話ができる
⇒特に大企業では「共通言語がないこと」が課題
⇒「共通言語化」する過程にも価値がある(研修、ブレスト) - 複数のビジネスモデルを検討比較できる
⇒フレームワークの使い回し - 全体像を直感的に理解できる
⇒1枚に収益構造/コスト構造を落としこむ
出版社の価値提案(VP)とは
- 出版社=プラットフォームビジネスでは?
⇒執筆者や特定コミュニティとの深いネットワーク - 出版社のキーリソースは?
⇒人(著者、編集者)
出版社のコアバリューとは何か
ディスカッションを進めるにしたがって、3つのキーワードを浮かび上がらせることができました。
1.著者・読者とのハブ
著者と読者がソーシャルメディアで直接つながることはあるけれど、出版社は両者をリアルに結びつけることができる立ち位置にあり、読書会・サイン会に限らず、両者の出会いの場を提供することがさまざまな付加価値を生み出すことができるのでは。
2.編集力
Webの世界によくある断片的・散発的なTIPSの集約ではなく、知識を体系的に整理し付けることに”書籍”の大きな価値があり、そのノウハウに長けた出版社は、情報編集というスキルを書籍以外の分野に応用できるのでは。
3.読書体験のビッグデータ活用
どういった書籍がいつ誰にどのように読まれどのような感想を生み出したのか、amazonのレビューをはじめブクペやブログやその他Web上のさまざまな場所に見えるようになった。それらの情報を集積し解析していくことで、読まれる本・読みたい本のニーズを推測し、ひいては知的トレンドの未来予測などもできるのでは。
BMG、本当に面白いマーケティングフレームワークです。新たなビジネスモデルを考える際にこのフレームワークに落としこむことで、分析・検討を網羅的に行うことができます。
感想・コメント
電子化は避けられない&進んでみないと分からない。他業界を例えに考えられたのが面白かった。
本を売る+付加価値を提供する、という点で、まだまだ道はあるのでは
紙の本は生き残る、シェアは別として。
BMCを一度書いて他の人に見せるのは有意。
BMGって何?がわかったことは収穫。ただし使い方には癖がありそう
ビジネスモデル<理念。自分たちの業界を自分たちの文脈で考えるとブレイクスルーは生じない?
2012/07/25
於:カフェミヤマ渋谷東口駅前店
講師:栗原 茂さん