腸内細菌叢は、「ちょうないさいきんそう」と読みます。KnowledgeCOMMONSは今回で(おかげさまをもちまして!)第43回。
第43回にして勉強会のタイトルが読めない会ってはじめてかもしれないです。その意味でも(笑)これから「くる!」テーマだと思い企画しました、腸内細菌叢。
とはいえ、講師あってのナレコモです。起業直後のお忙しい時期にご登壇いただいた株式会社サイキンソー 代表取締役の沢井悠さん、本当にどうもありがとうございました!
腸内細菌とは?
腸のなかに棲んでいる「いい仕事をする」細菌です。悪玉菌というわけでありません。腸内で一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な腸内細菌の集まり(微生物群)のことをいいます。「腸内フローラ」といういい方もあります。
病気に至る前の「未病」の部分、もしくは一部の疾患治療においていい仕事をするのではないか? と言われている菌です。
腸内細菌の機能
具体的な機能として、栄養代謝、免疫機能調整、脳神経系への(好)影響が報告されています。一生を通じてゆるやかに変化する、すなわち加齢により細菌の構成が変化するため、最近ではアンチエイジングとの関連についても研究されているようです。
アカデミックな部分では、腸内細菌は、2000年ごろから論文が増えています。腸内細菌は、種類や機能について未知の部分が多いのですが、研究が進み、論文化されたことで少しずつその生態が明らかになってきました。
腸内細菌といえば乳酸菌!?
その通りです。でも、実は、乳酸菌という菌は存在しません。「乳酸を産生する菌」のことを乳酸菌と言っています。代表的な乳酸菌に、ラクトバチルス・カゼイ シロタ株があります。おなじみのヤクルトの成分です。腸内に住むビフィズス菌を増加させたり、腸内有害物質の産生を抑制する機能を持つといわれています。
腸内細菌叢ビジネスの可能性
2つの方向性が模索されているようです。
ひとつは疾患治療。健康な人の便を病気の人に移植して腸疾患を治療するというもの。C.difficile感染が原因の潰瘍性大腸炎の適応症取得を目指して臨床試験が行われています。いわゆるB to Bモデルです。
もうひとつは、個人の「腸内細菌叢」を調べ、腸の状態を把握し、生活習慣の改善に役立てようというもの。こちらはB to Cモデルです。国内ではバイオベンチャー「サイキンソー」さんがサービスを提供しています。申込者にキットが送られ、簡単なウェブアンケートにこたえ、採便し、キットを郵送すると、約1ヵ月後にウェブ上で結果が見られるというものです。
腸内細菌の多様性やバランスについて知ることができるだけでなく、「低炭水化物、高脂肪、高たん白質の食事の傾向があります」といったリコメンデーションも得ることができます。
腸内細菌叢のこれから
沢井さんいわく、「たとえば血液は古くから指標の意味合いが調べられてきて、疾患との関連性が少しずつ明らかになり、今があります。腸内細菌はまだまだこれから」。
細菌叢は皮膚にもあり、若い人の肌の細菌叢をシワシワの肌に移植するとピチピチになる、なんていう夢のような研究も行われているそうです。
「こういうタイプの細菌叢ならこういうリスクがあるかもしれません」といった具体的なリコメンデーションとして提案できるようになるまでは少し時間がかかりそうですが、さまざまな可能性を秘めていことは確かなようです。
気になる方は、ぜひ、サイキンソーさんのホームページをご覧になってみてください!
2015/8/24
於:楽器カフェ
講師:沢井 悠さん(サイキンソー)
(記 山口)