eラーニングとは「コンテンツ」と「システム」の両輪で成り立っています。今回、eラーニングの本質的な価値は「コンテンツ」にあるのか、それとも「システム(LMS)」なのか考えることをキッカケとして、インフラがかなり整備された現在だとどんなeラーニングシステムが望まれているのか、Facebookをシステムに用いることをイメージして、参加者同士で仮説を立ててみました。
現在のeラーニングシステムの課題
eラーニングを受講しない理由は?
- 受講したい内容がeラーニングで提供されていないため、そもそも縁がない
- あったとしても受講料が高い
- 会社からやれと言われるだけで、目的が自発的ではないため刺激がない
などがまず容易に考えられる。
つまらない理由は?
- コンテンツ内の情報が陳腐化している
- IA(UI)がわかりづらい
など、コンテンツが伝えるメッセージ内容自体に課題があることもしばしばだが、最初にユーザがさわるのはコンテンツではなくシステムであり、システムの使い勝手の悪さが、コンテンツの内容理解に悪影響を及ぼすことが大きい。たとえば「シリーズもの」の講義受講はモチベーションが長く続かないことが多いようだが、それはシステムのせいだったりするのかもしれない。
コンテンツとシステムの鶏肋な関係
- コンテンツを最適に配信するために、LMSが作られる。
- 汎用性を高めるためには、LMSをベースにコンテンツを作る必要がある。
見事なハリネズミのジレンマである。
サンデル教授の「白熱教室」を例に、コンテンツとシステムの理想型を考える。
サンデル教授の講義は、ライブが売りなのに、編集した録画コンテンツでも充分に面白い。https://www.youtube.com/embed/z18zYCC4Su0
これはシステムが面白くしたものではなく、そもそものコンテンツがもつ力が強い。つまり、システムがコンテンツを面白くする、ということは、基本起こりえないのである。
ただし、「面白い」と言っている人たち全員がホントに最初から最後まで見たのか?」という点を考えていると、全員が見切ったわけではないのでは?と推察する。
これらから、「eラーニング」という体験において、システムが果たすべき役割は「継続的な学習の下支え」であるべき、ということが導き出せます。それはつまり、継続的な学習をサポートするシステムに求められる役割とは、学校や教室といった「場」の代替であり「舞台装置」であったりするのです。
実は上述のようなことは既に昔から考えられており、既存のシステムは、
- 数回のオンデマンドeラーニングを提供する
- ライブで講義を配信する
- 受講状況の善し悪しによってメールなどで後押しする
といったサポートは既に機能としてもっているものが多いです。しかしそれでも、実際に集まって学ぶ集合研修と比べると、「eラーニングのほうが学習効果が高い」という声が多くなったとはあまりききません。
仮にその原因を「コミュニケーションが少ない」とした場合、Facebookのような仕組みに乗ると、どうなるんでしょうかね?コンテンツ単位でコミュニケーションがある、それだけでまずは充分?すでにあるeラーニングシステムのいくつかは、SNSや掲示板機能など、コミュニケーションインフラをもっていたりもします。ただしそれらはコンテンツとコミュニケーションが分断されているのが大体です。
学習しているコンテンツにダイレクトに紐づいたスレッドベースでのコミュニケーションは使い勝手が良いはずで(デジハリは既にシステムをそうしているらしい)、前川さんのスライドに具体的なイメージがあります。ぜひご一読ください。
前川さんのスライド⇒eLearning System_20110722 KnowledgeCOMMONS vol.5
その他TIPS
- 企業研修において、Facebookは採用しづらい。
- とあるシステムは「受講者が講義を配信登録可能な」サービスを提供しているが、コンテンツが玉石混交になってしまい、悪貨が良貨を駆逐するようになってしまっている。
- もしかするとFacebookのスレッドよりも、「ニコニコ動画」のコメント弾幕(?)のほうが、せんじんからの学びを非同期で得るには最適なのでは?
参考:海外でeラーニングが流行っている理由
- 韓国~「超」学歴社会であり、評価制度にeラーニング受講履歴が組み込まれてる。また、大学組織と同等それ以上の組織としてeラーニング管理部門が役所にあるそうです。
- アメリカ~国土の広さ(一堂に会せない)+寄付文化が、eラーニングコンテンツを作成することへのインセンティブにつながっているそうです。
2011/07/22
講師:前川 英之さん