「大学の講義をみんなで作ろう!~ソーシャルメディアリテラシー教育編」勉強会レポート

まだまだネットリテラシーについて深堀りされていないまま、mixiからはじまりtwitter、Facebook、Lineといったソーシャルメディアの普及に伴い、真贋定かでない情報が「安易に」しかも「爆発的に」流通している最中、ネットリテラシーの延長線上に【ソーシャルメディアリテラシー】の必要性が重要視されはじめています。

企業においては「ソーシャルメディアでの『炎上』対策」という文脈で、ソーシャルメディアリテラシーがわりと早くから考えられています。ですが、大学を筆頭とした教育現場の最前線では、リテラシー教育の取り組みはまだ浸透しているとは言えず、たとえば学生のソーシャルメディア上での事故がまだまだ散見されます。

そこで、『大学の講義をみんなで作ろう!~「ソーシャルメディアリテラシー教育」編』というテーマで、勉強会のグループディスカッションをヒントに、大学の講義で実際に使う教材をつくってもらう、というワークショップを実施しました。講師は、日ごろから大変お世話になっている東京情報大学の河野義広先生です。

なお、今回はTwitterとFacebookをディスカッションの中心に据えました。もちろん、ソーシャルメディア にはそれ以外にも、mixi、Google+、LINE、Foursquare、Pinterestなどなど多くのサービスが多数の利用者を獲得しており、今回取り上げたTwitterやFacebookが5年後10年後にも世界の主流であるとは限りません。

今回はTwitterとFacebookの2つを比較し、その違いを議論することで、今後登場する新たなサービスとの接し方も考えられるようになる、つまりソーシャルメディアとの接し方について普遍的な考え方を知れるのでは、という仮説がありました。

Twitterはインタレストグラフ(興味・関心)

まず、Twitterはシンプルかつ自由度の高いサービスです。登録名を実名にするか匿名にするか、顔写真を公開するか、プロフィールに何を書くかなど、機能的にはシンプルである、その反面、公開する情報の選別については自由度の高いサービスといえます。ソーシャルメディアに初めて触れる方には、手軽に投稿できる点で、雰囲気を知る上でも最初に利用して頂きたいサービスといえます。

ただし、手軽に投稿できる一方、その投稿はインターネットに公開される情報となるため、相応に使いこなすには高いリテラシーが要求されます。

Facebookはソーシャルグラフ (人間関係)

一方、Facebookは原則実名です。個人と密接に結び付くため、原則1人1アカウントとなります。職場や学校、その他のコミュニティなど、現実の人間関係を反映したつながりを有しており、その人達とどのように交流するかは現実の人付き合いと全く同じです。ソーシャルメディアは現実の延長線上にあるものと捉え、オンライン/オフラインで変わらぬ付き合い方が大切といえます。

ディスカッションテーマ

  1. オンライン/オフラインの発言で気を付けることは?
  2. ソーシャルメディアを使う目的は?
  3. 目的に合わせてTwitterやFacebookをどのように活用するか?
  4. 男性、女性で特に気を付けることは?

テーマ1:オンライン/オフラインの発言で気をつけていることは?

  • それを言ったら相手がどう感じるか、気にしながら発言している。
  • 情報のロスが起きないよう、ことばにカッコ書きで補足をつけたり、間違ったコミュニケーションにならないように注意している。
  • Fbはすごく古い投稿でも誰かがコメントすれば一番上にでてくる。気をつけないといけない。
  • オンラインは、雑音になるネタはやはり気になると思う。家族向けの話は仕事モードの人にとっては雑音、仕事モードな話は家族やプライベートなことを発信している人にとっては雑音。オンラインならそこにいる人の顔色を見ながらコントロールできれるが、オンラインはそれができない。
  • Facebookはいろんな人とつながっちゃうので、何を発言するか難しい。

※社会人と学生の違い

  • 学生と社会人では、コミュニティを形成している層が違う。
  • 学生にとっては自分の特性を知ってもらえる、という観点で良い。一方で、オンラインは発言することの怖さがある。発言している内容は、その人の性格がでているように思う。
  • 学生はつながっているのが友達の延長線上。きちんと見せないといけない相手はほとんどいない。
  • 社会人は層のバリエーションが多い。仕事、友人、その他のコミュ。
  • オンライン上でのふるまいはかなり違うと思う。
  • 社会人でも業種によっても違う。SNSを一人も使ってない会社もあった。そういう社会人のコミュニティは学生に近い。

テーマ2:ソーシャルメディアを使う目的は?

  • ウエブ系代理店で働いていた時は生存確認みたいにつかっていた。
  • つながりを切らないためのツールとして有用だと思う。
  • 人脈づくりにつかっている。
  • なんとなくやってる。LINEでいじめがあったりすると聞くが… つながりを可視化することで安心感を持ちたいのだと思う。
  • 自分で人脈つくって、やりたいことを見つけたい、自分のことをアピールしたい。
  • なんとなく周りがやっているから、となれあいからソーシャルに入ったが、いまはあくまでセルフブランディングとしてつかっている。
  • 転職して人材紹介会社に行って、オフィシャルに自分を見せる、見られるようになった。
  • 見られたくない内容は消したりしている。
  • 人とつながっている安心感というもやっとした目的で使っている。
  • ポジティブすぎる、(いつも元気いっぱいに「おはよう!」)みたいなコミュニケーションは見ていて辛い。死にそうな時もあるので。
  • ふつうの就職活動では自分のすべてを知ってもらうことができないので、ソーシャルを使う。
  • 取り引き先の人、面接に来た人をソーシャル上で探すケースも多くなった。

サマリー

  • 暇つぶし(テレビを見るのと同じように暇つぶしで使う。流れて来たツイートに反応する。)ゆるいつながり
  • 強制力がない、ゆるいつながりを持ちつづけておくためのツール
  • プライベートで使う:その中で話せる内容のみを報告していく。
  • ビジネスのためのツールとして使う:市場の反応を見るような、マーケティング的なつかい方。たとえば朝、しまじろう放映後にしまじろうを検索すると、消費者がどんな発言したかわかる。

テーマ3:目的に合わせてTwitterやFacebookをどのように活用するか?

Facebook

  • 海外の人とつながるため。
  • 広く浅くつながるにはちょうどいい距離感。名刺交換的なつながり。

Twitter

  • 基本無視されるのがあたりまえ。
  • 拡散力、関係ある人を巻き込む力はすごい。
  • 興味のあるものに気兼ねなく乗っかることができる。
  • 自分がほしい情報を自分で取りにいける。

テーマ4:男性、女性で特に気をつけることは?

女性への提案

  • 例えばどこかのお店でつぶやくとき、いままさにここにいます、というタイミングではなく、出るときにつぶやく。ストーカーなどの犯罪に巻き込まれたくはないから。
  • 寂しいオーラ出している人がいてそれはすぐにわかる。寝られない、等の発言から。

男性への提案

  • 自分の限界ギリギリのことを言ったり、知ったばっかりのことを(自慢げ)に言ったりする。そういう観点からすると、やたら長文、とか、いろんなことを頻繁に書き込む奴はをつけろ、というのがあったりするように思う。嘘はついてないと思うが。
  • 「自分を大きくみせたい」という願望の延長が、バカ発見機なんじゃないかと思う。たとえば「飲酒運転なう」、「TDLのジェットコースターとめちゃった」とか。こういうのは男性が多い。

男性から女性への提案

  • 下ネタは、小出しにするとおじさんが寄ってくるが、連発すると変な人も寄ってこなくなる。やるなら徹底的に。
  • 女性は付き合っている男性がいたら、SNSで誰かに対して言っているとはいえど(女性の発言に対し)男性は「自分に対して発している」と思っている、と理解しておいた方が良い。

個人的には河野先生のコメントがとても重たく深く響きました。

「SNS上で情報発信することで自分自身を知るようなつかい方をしている。何かあったときのガイドラインになる。」

「オンライン・オフラインでの発言は分けていない。”どこに出してもいい自分”であることを常に心がけることこそ重要。」

河野先生によるディスカッション前段での情報共有など、スライドをぜひご覧ください。

Memo:スライド埋め込み

SocialMediaLiteracy 20130523 KnowledgeCOMMONS vol.22

東京情報大学では「ソーシャルメディア/クラウドサービス」をテーマとした講義が新設科目としてはじまります。単なる知識習得を超え、「学生一人ひとりが自らの目的に応じた使い方を考えられるようになること」を目的としているとのことです。

講義後の教材の反響もぜひ、お伺いしたいですね。

2013/05/23
於:株式会社ベネッセコーポレーション 新宿オフィス
講師:河野義広先生
(記・山口)

※今回のワークショップは、河野先生がITMediaマーケター通信で連載中の「アカデミックがみた社会」に、河野先生ご自身もまとえめていただいています。

ワークショップを活用したソーシャルメディアリテラシー教材作成 前編

ワークショップを活用したソーシャルメディアリテラシー教材作成 後編

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事