「”死”を想う。〜デス・カフェ体験会〜」勉強会レポート

今回のテーマは「死」。自分の死、大切な人の死について、シニアマーケティングの専門家で「老年学(ジェロントロジー)」の研究家としてもご活躍中の堀内裕子さん(シニアライフデザイン代表)に、「デス・カフェ」をオーガナイズしていただきました。

「デス・カフェ」とは、日々の生活とは遠くなってしまい、私たちが避けて通りがちな「死」について、今一度みつめ直す場として、2011年にロンドンで発祥しました。カジュアルな雰囲気のなかで「死」について語り合うワークショップです。

本日は、デスカフェだけでなく、シニアマーケティングについても幅広くご講義いただきました。

シニアマーケティングの特徴とは?

シニア層の特徴について、「貯蓄、学歴、仕事、趣味、興味関心、物事へのモチベーションなどが『バラバラ』すぎ、かつ、介護などの不安からお金を使いたがらない層」と堀内さん。セグメントが無数に出来てしまい、上手くターゲティングできたとしても、ニッチな領域での勝負を強いられそうです。なかなかリスクが高いマーケットだな… などと考えてしまいます。高齢社会という外部環境からすると、確実にポテンシャルはあるはず、なんですけれどね。

ご参考まで、高齢者の平均貯蓄額は65歳以上の世帯(二人以上の世帯)で2,257万円(総務省家計調査、平成23年)。今が良ければいいという考え方もありますが、いざという時に重要なのはフリーキャッシュフロー、ということをよーく分かっている世代なのかもしれません。

シニア層のインサイトや、特筆すべき点は?

「『心配はしてもらいたいけれど、迷惑はかけたくない』、傾向を語るならこんな感じ」と堀内さん。男性は親や周囲に対しても、自分に対しても死に対する具体的なイメージを持っておらず、「考えが甘い層」なのだといいます(笑)。

取り越し苦労はやめましょう。「ピンピンコロリが一番!」なんて言ってみても、実際は老化、がん、認知症に恐怖感を抱いている。お金は使いたくないのに、まだ健康なのに、何百万もかけて将来の介護生活に備えてリノベーションしてみたりする。大きな病気をすると、科学的根拠に乏しい健康食品や民間療法を盲信し、大きな金額を投資することもある。

どこで死にたいか、どう死にたいか、誰に看取ってもらいたいか、といったことは介護施設などでもあまり話し合えていないのだそう。介護従事者の終末期や死に対する教育がまだまだ不十分、といったことも背景にありそうです。

ますます、つかみどころのない世界…

そこで、みんなで「死」について考えてみました

より具体的なイメージを掴むために、最近考えた「死」に関することについて、普段であれば自分の心の中に留めてあることだと思いますが、せっかくの「デス・カフェ」ですので、グループディスカッションしていただくことにしました。

3〜4名をひとつのグループとし、おのおのの死生についての思いを気軽に話していただきました。

みなさんのコメントの一部をご紹介。

  • 親や祖父母の他界を、他の人より若い時期に経験したので、だいぶ早い段階から死を意識してきた。自分が特殊な環境にいたのかなとも思う。
  • 日本では葬儀社の名前を車に入れない。死は「穢れ(けがれ)」と思われている。親の死の経験を通して、また、自分には子どもはいないので、自分が奥さんを看取って死にたいと思う。
  • 父の病気(若年性アルツハイマー病)をきっかけに、意識するようになった。金融機関の情報やパスワード関連の情報を、すぐに取り出せるようにまとめておいたりしている。
  • 120歳まで生きることを前提にカウントダウンしてみたい。
  • 46歳で死ぬ、と根拠はないが思っている。前日まで仕事して死にたい。そのために健康でいたい。
  • 死んだときに何で名前を残せるかを考えて活動している。
  • 永谷園のおちゃづけを最期のごはんにしたい。
  • 安楽死の選択肢あってもいい。健康寿命期間を終えた後、病気の状態では生きていたくない。
  • 今生きていること自体がバーチャルな気がする。
  • 死にざまがきまっていないと生きざまも決まらない気がしてきた。

ここ数年の間、「エンディングノート」が話題になっていますね。こちらはそのきっかけとなった映画。オススメです。

堀内さんによると、エンディングノートとは「より的確な表現として、『わたしの取扱い説明書』という言い方をお勧めしています」とのこと。「終わり方の取扱い説明書」、ということのようです。死を扱うことに悲観的になりすぎない表現で、いいですね。

具体的には、どんな医療や介護を受けたいか、どこでどんな風に死にたいか、銀行口座やカードや投資関連商品の処理、保険商品のこと、ローンなどの情報や後処理、SNSのアカウントのクローズ、家族がいても自分しか知らないことも多いはずで、それらを最終的に誰に託したいかといったことなど。

もしも、あなたが「余命半年」と告げられ、来年の桜はもう見られない――。そんな状況を想像して、「ジブンの取扱い説明書」について、具体的に考えてみる機会を持ってはいかがでしょうか?

参加者さんの声(アンケート結果より)

  • 死に対する考えは人それぞれ。死生観を語らなくなったのはあくまで戦後であって、ちょっと前までは身近だったと思います。
  • どう生きていくか、死ぬ前にやるべきことが聴けてよかったです。いつ何があっても後悔しない生き方をしたいし、周りの人がいて生きるということの大切さについても感じることができました。
  • 皆さんの「死」に対する考え方・姿勢を知ることができ、よかったです。
  • Gerontology(老年学)とThanatology(死生学)、両面性があるようで全く独立した変数として考えるのもいいような気もしています。(正解はないかも知れないですが)

2017/7/27
於:株式会社D2C
(記 山口)

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