人によってまったく理解のしかたが異なる「マーケティング」。
たとえば「市場調査してる人」や「広告宣伝やってる人」と思われる一方、マーケティングをしっかり学んだ人に定義を聞いても、たとえば「営業を要らなくする方法論」、またたとえば「企業活動のすべて」等、人それぞれにマーケティングの定義は異なるようです。
一方、具体的にどういうことをやっているかが周囲に理解されづらいのが「広報=PR」という職種で、「ホームページ更新してる人」や「プレスリリースを書く人」だったり、「雑誌やテレビからの問い合わせ窓口」だったりと、さまざまな断片でその業務を認識されています。
これら2つの職種は、いずれも「企業」と「まだ見ぬユーザー」をつなぐ、重要なコミュニケーションの担い手です。
今回のナレッジコモンズは、彼らのミッションを正しく理解する機会を、
- グローバル企業で実務を経験した後、地域活性化をミッションに起業した「マーケティング」講師の、渡邉さん
- 広告代理店のNo.1営業から広報/IR部門の立ち上げ/運営を経て、フリーランスで広報支援/広報人材育成を行う「PR」講師の、岡本さん
の、2人の講師から頂きました。
1-1:マーケティングとは
顧客起点に製品やサービスを考える行為で、「企業活動すべて」を指します。
1-2:PRとは
PR=Public Relationsの略で、「(企業が)社会と”良好な関係”を築いていく」ことを指します。
1-3:マーケティングとPRとの関係
企業活動とは、コミュニケーション活動を通じて社会から信頼を得、そのことで企業やサービスの価値を高める行為です。
両者の関係は、企業活動全体としてマーケティングを設計し、マーケティングに基づきPRがコミュニケーションを設計する、というものです。
1-4:目線の違い
- マーケティングは、市場から顧客を見る。
- 広報は、視野を限定せず、タイミングに応じたステークスホルダーを見る。
- 営業は、顧客から市場を見る。
営業とマーケティングは表現の上では相反していますが、決してそんなことはなく、マーケティング戦略に沿って営業が戦術的に動き、営業は最前線で得た顧客や市場の声をマーケティングにフィードバックし、それに基づきマーケティングは戦略を調整する、といった、相互補完関係にあります。
2-1:マーケティングのキホンはバリュープロポジションを定めることから始まる。
バリュープロポジションとは「企業またはサービスが【顧客に提供する価値】」であり、
- 誰に
- どんな利益を
- なんでそのサービス(企業)が
提供するかを、しっかりと定めたものです。バリュープロポジションは一朝一夕で出来上がるものではなく、また、作成する過程でついつい独りよがりになってしまうケースが散見されるため、顧客目線で価値を見定める難しさがそこにあることがよくわかります。
2-2:コンセプトは5W1Hで考える。
コンセプトを考える、とは、具体的にはその製品やサービスが
- 誰の(who)
- いつのタイミングの(when)
- どういったシーンの(where)
- どういう目的を(why)
- どういったサービスで(what)
- どうやって(how)
解決するか(または満足してもらうか)を定めることであり、それは製品開発の出発点=上流工程で考えることが重要です。
STPや4P、SWOTなどのマーケティングフレームワークを取り出す前に、5W1Hでコンセプトをしっかり考えることが、「商品が売れない」という自体を生み出さない他第一歩です。
3-1:PR(広報)と広告の違い
メディアを買って、掲載規模や内容をコントロールすることで宣伝を行うのが「広告」。広報はその逆で、メディアが情報を掲載する主導権をもっています、そのため企業はコントロールできず宣伝もできない、でもそのかわり、受け取られた際の「情報の信頼度」は、広告よりもはるかに高いものです。
企業が社会に知ってもらいたいと思い、それをメディアが「社会にしらしめる価値がある」と認めた場合に、広報が成立し、「(企業が)社会と”良好な関係”を築く」ことができるのです。
3-2:PRの元ネタは切り口次第
PRはメディアを通じて社会に「知りたい」と思ってもらえるかがポイントであり、それは「情報の切り口」をどう作るかが重要になります。
切り口とは
- 意外性
- 一番、初めて
- 社会性や地域性、トレンド
などであり、数字を交えたりしながら顧客目線のストーリーとして組み立ていくことで、情報のメディア掲載への道は開けるようになります。
他にも、
- ソーシャルメディアを通じた企業と社会とのコミュニケーションのあり方
- リリースを作成する際のHOWTO
- メディアとの付き合い方やメディアからみたPRの価値
- サポートやクレーム対処やサンキューレターといった「アフターマーケティング」
などなど、ここにはとてもまとめきれないボリュームのマーケティング・コミュニケーションに関する有益なTIPSを、参加者とのダイアログを重ねながら、講師お二方にたっぷり120分お話いただきました。
FAQ
Q:会社規模によって、広報という担当をつける/つけないのボーダーラインは?
A:数値的な指標はない。経営者が、社会との関係づくりにウェイトをおいているかどうか、という点こそ重要。※社外だけでなく「スタッフとの情報/ビジョン共有」においても、広報は重要。
Q:広報に向く人材は?
A:経営者に盾つけるかどうか。
⇒企業のミッションやバリューを、社外に伝わる表現に組み替える、だとか、今はその時期ではない、と、押しとどめられるか。
感想・コメント
バリュープロポジションを固めていくにあたり、顧客目線(客観的視点)をもっている人をスタッフに加えることが有用。繰り返してVPを研ぎ澄まされていく。
社会に対してどういう価値を提供できるのか、を再度考える重要性を理解。企業理念をスタッフ間で共有する必要性を感じた。一方、自分が提供したいことと、社会が求めていることとのバランスをどう取ればいいかは難しいと思う。
「マーケティングとはなにか」は持ち帰れた。
自社として実践している、という点において「言語化することはタフで持続的な作業」ということを持ち帰れた。
期限を切って、プロジェクトの方向性を再度検討したい。
社長とディスカッションしてみる。考え方の共有化ができてないな、と感じた。
前のめりに学べた。B2Bマーケティングもまだまだやるべきことたくさんあると気づいた。
フワフワしてたマーケティングのイメージがしっかり見えた。
エントリー開始直後からたくさんの参加希望をいただき、キャンセル待ちがあまりに多く出たことから、開始前に2回目開催を約束いただきまして、この場を借りてお二人に御礼申し上げます。ありがとうございました!
※今回は資料非公開。それにしても、密度・ボリュームともにすごうございました。