今回のテーマは、ウェブ関連のお仕事をされている方なら一度は聞いたことがある!と思われる「オフショア開発」についてです。ただ、実際に発注経験のある方はどれくらいいらっしゃいますか?
そんな近くて遠いようなオフショア開発について、実際どうなのよ!というぶっちゃけ話込みで、株式会社ブリスウェル 代表取締役の山口潔さんにお話しいただきました。
そしてもちろん、今回も小野さんにグラフィックレコーディングしていただきました!
【オフショア開発って何?】
オフショア開発とは、情報システムやソフトウェア開発業務を海外の事業者や海外子会社に委託・発注すること。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調べでは、日本のIT企業の約45.6%がオフショア開発を導入していると言われており、今後もその需要は高まることが予想されているそうです。知っていないと乗り遅れそうです。
【ベトナムでオフショア開発をはじめた理由】
「若くて優秀なエンジニアを確保しやすいんです」と、山口さん。現在は、年間30プロジェクト(保守含む)くらいの案件を、オフショア開発を取り入れつつ回しているのだそうです。
ベトナムの人口は増加傾向にあり、現在は9000万人超、平均年齢はなんと25.7歳(比して、日本の平均年齢は45.8歳)。 加えてベトナムは国をあげてIT教育・産業育成を推進しており、採用も比較的容易なのだそう。他のアジア諸国と比べても比較的人件費が低く、中小規模の案件もフレキシブルに対応できることも要件のひとつ。
大規模開発はというと、今や中国やインドがメイン。「大手企業の業務を受注するところからスタートしているためか、決まった仕様書に対して確実に仕上げるようなタイプの仕事を得意とする印象がありますね(山口さん)」。
また、フィリピンやインドにとっては、日本は発注元のメインではないようで、そんなこんなでベトナムが注目されているのであります。
と、分析しつつも、本当のところは予算的に厳しく、かつ、規模の大きい案件が来てしまい、「自社だけでは回せない!どうしよー!」と、知り合いに聞きまくってたどりついたのが、ベトナムでのオフショア開発だった、とのこと。2014年にはベトナム・ホーチミンのオフショア拠点を法人化していますし、その後もベトナムとの協業でたくさんの案件を成功させていますので、結果オーライといったところでしょうか!?
【オフショア開発に適した案件、適さない案件】
参加者みんなでディスカッションしつつ、山口さんからもフォローいただきつつまとめると、こんな感じでした。
適した案件:
納期に若干余裕がある案件。度重なる仕様変更がない案件。適度な規模感。画面系の機能が多いような案件。汎用性の高い技術を使っている。デザインがすでに用意されている案件。
適さない案件:
恐ろしく納期が短い案件。緊急対応が必要になる案件。かなり小規模予算である。マニアックな技術を使う。仕様変更が多い。おそろしく大規模(数億円)案件。日本特有の商習慣知識が前提となっているプロジェクト。丸投げしたい案件。比較的高度なデザインが入るもの。
比較的、想像の範囲といった感じかもしれませんね。
【オフショア開発の成功の鍵を握るのは?】
やはり言語や商慣習に関する部分はネックになるようで、そこを埋める役割となっているのが『ブリッジSE(日本語がわかるエンジニア)』。
この人が!!なんといっても!!日本とベトナムの懸け橋であり、オフショア開発の成否を握るキーパーソンになのだと山口さんはおっしゃいます。うまくいくかどうかは、ブリッジSEの能力に左右されるといっても良いくらいなのだそう。簡単な案件はブリッジSEを置かないケースもあるそうですが、少し難しい案件になるといないと難しいことも多々あるようです。
日本⇔ベトナム間の日々のやりとりは、仕様書を介したコミュニケーションがメインになるのだそう。フォーマット化された仕様書を日本語で書き、ブリッジSEを介して現地とコミュニケーションする、とこんな風に。記述が多い箇所はピンポイントでベトナム語の翻訳を入れたり、といったこともあるようです。仕事の回し方が見えると、ブリッジSEがいかに重要かも見えてきますね。
【ベトナム(海外)拠点のマネジメント ~日本との違い】
いくら親日とはいえ、そこは文化の異なる海外。たくさんの気づきのなかから、マネジメントという観点で主な点を語っていただきました。
初期のころはベトナム人のマネジメントのみで会社を運営していたため、日本語を話せないスタッフの様子を把握するのが難しかったそうです。ベトナム語はハードル高そうですね… また、転職は当たり前、昇給は当たり前、給与データは全員に筒抜けとかなりオープンな職場環境とのこと。
意外と家族的なノリがウケる(昭和的な、中学生的なノリ)そうで、社員旅行などのレクレーションが歓迎されるといった一面も。業務に直結する部分では、品質に波がありクオリティコントロールが難しいことがある、マネジメント能力の高い人材が不足しているといった問題点も抱えているそうです。
このように、チャンスとリスクの振れ幅が大きいのも確かなので、「日々格闘中」とおっしゃっていました。
ブリスウェルさんでは、ベトナムでの数人〜数十人の開発チームを一定期間確保して自社のリソースのように仕事を進める「ラボ型」にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。もはやベトナムの存在は単なる委託先としてではなく、真のビジネスパートナーとしても重要なポジションとなっているようです。
日本にとっては必要不可欠なリソースとして、また、ベトナムの方たちにとっては、成長の機会として、テイクとギブがぴったりマッチしたビジネスモデルを確立していらっしゃる、ブリスウェルさんでした。
P.S. なんと山口さん、ナレコモ勉強会の次の日がお誕生日だったとのこと、おめでとうございます!
2016/10/19
於:株式会社D2C 講師:山口 潔氏
(記 山口)