超多忙といわれる製薬業界のMRは、
- 就業し続けるための学習(薬等に関する知識の習得)
- 成長するための学習(個人/会社として競争力をつけるため)
をどのように行っているのか、前回と同じ講師に、業界の仕組みをお話いただきました。
歴史
MRという職種は「明治45年」から始まり、第二次大戦後の衛生思想の向上や予防薬需要、保険制度の整備などにより普及した。1960年代には市場が一度飽和し、売上至上主義による薬害など多くの問題が発生した。それを受けて1970年代、業界団体による自浄活動が開始され、1995年、日本MR教育センターが設立し現在の制度に至る。
業界構造
- 薬は2種類(処方箋医薬品と量販的な医薬品)あり、前者は厚生労働省が、後者はメーカーが、それぞれ価格決定権を持つ。
- 薬は、製造業者に価格決定権がなく、卸(MS)が決めている。
- MRは薬の販売職ではなく「安全管理情報を収集し医師に提供する」ミッションを負っている。
医師の情報源は?
医師にとって、情報源としてのMRの価値は非常には高い。
- MR
- セミナー/学会/研究会
- 他の医師からのクチコミ
- 論文
- Web(情報サイト)
- ガイドライン
MRが伝える情報は?
薬に関する情報は、医薬品医療機器情報提供ホームページから「全て」入手可能。他の主要な入手経路としては2つ存在。
- 薬剤師向けのインタビューフォーム(日本病院薬剤師会)
- ドクターレター(緊急安全性情報)
MRに求められる資質
医療従事者としての倫理観と医学/薬学関連法規に関する知識を備え、製品の全ての情報が公開されている状況の中で、医師という特殊職能集団と上手に渡り合うコミュニケーションスキルを身につけること。
製薬業界において「製品力がある」という状況はレアケース。だいたいにおいて、薬の効能は似たり寄ったり。なので、MRの営業力が重要になる。それが、MR=営業の最高峰、と言われる所以でもある。
MR教育のカリキュラム
MR教育は
- 導入教育(資格取得のための「受験」勉強)
- 継続教育
の2つに大別され、教育内容は
- 技能実習:ロールプレイ
- 実地研修:説明/伝達のフィールドトレーニング
- 製品知識:自社製品/競合製品、関連疾患
の3つに分類される。
このなかで、3の製品知識に関連して「競合製品の誹謗中傷」が、製薬会社同士のトラブルの一番の原因になりがち。
MR教育センター
MR教育は全て医薬情報担当者教育センターに事前申請が必要。MR教育センターへの登録企業数200社超。
近年のMR教育
新薬開発は減少傾向にあり(年間100程度)、新薬が増えないと教育機会が増えない。これが、MRのアウトソーシング(コントラクトMR)を推し進める要因。
Q&A
Q:eラーニングの強みは?
A:製品知識は強みが出せる。導入教育の一部もeラーニングで実施している。集合教育、対面、eラーニング、サテライト教育等、MR教育の手法は薬事法の縛りはゆるいため、融通が効く。
Q:研修内容の独自性はどうやって出す?
A:薬が出来上がるまでの過程や背景など、そういった付帯情報は自由に行える。
Q:企業が教育にかけるコストはどれくらい?
A:あまり気にしていない。
Q:教育の比率は?
A:断然、導入研修。継続研修は月1回位。
Q:現状の問題点は?
A:教育システムにより競争がない=テキストが面白くない。
Q:グレーゾーンの伝達方法は?
A:口頭ベースの「マーケティング」勉強会。
Q:できるMRは?
A:処方を増やす(=医師の利用を増やす)。他の薬からのリプレース(病院内の薬事審査会を通過)。この2つを実現できるMRは能力がとても高い。
Q:初めて売れるまでは?
A:(新入社員から)2~3年はかかる。
Q:MRの有効な情報収集は?
A:他のMRと仲良くなること。
Q:1人のMRが担当する範囲は?
A:だいたい10~15施設。
TIPS
- どういう疾患をターゲットとしているか、と、それに対しどういう薬を開発しているか、が、製薬メーカーの「戦略」。
- 薬事審査会において強い発言権を持つのは、医師だけではなく薬剤師や看護師であるケースも存在する。つまり、MRは医師に取り入るだけでは成果は上げられず、病院全体へのアプローチが必要になる。
- MRの離職率は30~40%。
例によってスライド公開いただいてますので、ぜひご一読を。
大塚さんのスライドはこちら⇒MR2(Medical industry’s Education)_20110530 KnowledgeCOMMONS vol.2
2011/05/30
於:カフェミヤマ(渋谷東口駅前店)
講師:大塚 英文 さん