「地域包括ケアシステム」。なんとなくわかるような… でも具体的に何を意味するかと聞かれると難しく…といったところでしょうか?
地域包括ケアシステムには、「地域が包括ケアシステムをつくる」と「地域で包括ケアシステムを完結させる」の2つの意味がある、と大場さん。なぜいま、このようなことが言われているのかというと、日本の医療費は年間40兆円(増える傾向)。保険料は20兆円(なんと減る傾向)。この受給のアンバランスっぷり!しかもこの額!なんとかしないと…という状況なのです。
保険者としても、将来的にはサービスの受け手としても、他人ごとではいられないこの問題について、外資系製薬企業で地域医療研究を担当されている大場理恵子さんがレクチャーしてくださいました。
地域包括ケアシステムってなに?
厚生労働省によると、地域包括ケアシステムとは…
「2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような地域の包括的な支援・サービス提供体制」のこと。
図に示すとこんな感じになります。
なぜ2025年かというと、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる年だから。第一次ベビーブーム世代で、日本の行動経済成長とバブル経済の崩壊の両方を経験した世代が全員後期高齢者になるなんて、時間が経つのは早いですね。
「医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制の構築」を行うよう指針が示されています。
医療・介護はなかなか専門性が高く難しい領域と言われていますが、予防、住まい、生活支援まで広がると、そこにはビジネスチャンスも生まれそうです。
地域包括ケアシステム、どう構築する?
主に市町村において、 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築していくことになっています。3年ごとにPDCAサイクルを回して、段階的により良くしていくイメージですね。
ただ、言うは易し、行うは…という側面もありそうで、たとえば「医療」の分野で議論が行われているのが、医療機関(病床)の、地域単位での役割分担の見直し。高度急性期、急性期病床は各県ともに削減の方向に、一方、回復期リハビリテーション病棟の病床は増床の方向に、さらにはそれに見合ったインセンティブ(診療報酬)が付与される方向で動いているようです。要するに、医療機関によっては、サービスや経営のありかたを根本から変えないと立ち行かないケースもでてくる、ということになりそうなのです。
なかなかそう簡単にはいかない感じがします…
「住まい」に着目した地域包括ケアシステム事例 ~南部町東西町のケース
最後に、医療・介護・予防・住まい・生活支援のなかの、「住まい」に着目したケースをご紹介します。
厚労省のモデル事業(地域生活支援システムモデル事業<地域コミュニティホーム>)として、先進的な取り組みが紹介されています。要は、空き家を回収して老人ホームに作り替えて高齢者の方たちなどに活用していただく、というもの。
空き家の活用はひとつの例とのことですが、空き家問題もまた、日本の課題のひとつです。こうした日本のさまざまなリソースを活用しつつ、ひとつでも多くの良い循環が出来るといいですね。
講師の大場さん、スマートな会議室をご提供いただいた株式会社D2Cさん、どうもありがとうございました!
2016/5/19
於:株式会社D2C
講師: 大場 理恵子 氏
(記 山口)