法人教育分野のはしくれにいると、「大企業が新人研修にコストをかける時代はいつか終わり、大学または人材業界がその責を担うようになるのでは」と思うことがしばしばあり、「そもそもそういえば人材業界とはいったいどういうところなんだろう?」と疑問に思いはじめたのが今回の企画のキッカケで、前回の製薬業界とおなじように、やっぱり「業界のなかの人」に、市場についてや業界動向についてなど、詳しく教えていただくのが一番、と、知り合って間もない青山さんに講師になっていただきました。
現在
人材ビジネスは次の3つの市場にわけられます。
- 人材派遣
- 人材紹介
- 求人広告
1.人材派遣
6兆円市場、薄利(営業利益率3%程度)。コンクリートビジネスの利益率とだいたい一緒。強いのは、リクルート、テンプスタッフ、パソナ。
2.人材紹介
1,000億円市場(USは2兆円)。年収の30%がフィー。強いのは、リクルート、インテリジェンス、JAC
3.求人広告
???円市場。広告モデル。リクナビNEXT、en転職、マイナビ転職。
要するに、リクルートさんやっぱり大きな巨人ですね、という話。
ソーシャルリクルーティング
- ソーシャルリクルーティングは、企業と人材がダイレクトにつながってしまう。それは中間業者にとっては脅威。
- こんな人いない?」「こんな人いらない?」といった、Facebookやtwitter、LinkedInなどSNSが生み出した雇用情報こそがソーシャルリクルーティングの本質では?
「弱い紐帯」
従来の、転職するときのつての強さは何?身近な人?遠い人?
- US:あまり強くないつながり経由での採用の方が高かった。
- 日本:強いつながりの方が採用率が高かった。
それが、ソーシャルの登場により、日本も「弱い紐帯」にシフトしはじめたのだろうか?
※弱い紐帯の強み
米国の社会学者マーク・グラノヴェッターが発表した社会的ネットワークに関する仮説。新規性の高い価値ある情報は、自分の家族や親友、職場の仲間といった社会的つながりが強い人々(強い紐帯)よりも、知り合いの知り合い、ちょっとした知り合いなど社会的つながりが弱い人々(弱い紐帯)からもたらされる可能性が高いといいます。これを「弱い紐帯の強み」の理論と呼びます。
(日本の人事部さんより抜粋)
ソーシャルリクルーティングの形態
採用応募
- オープン:twitter、Facebook
- クローズド:ML、Facebookグループ
共通母数による採用情報のプール
- Facebookグループ
- メーリングリスト
※青山さん曰く「twitter等によるソーシャルな採用活動は、「深い&売れるノウハウ」が蓄積されだしている」そうです。
人材業界の未来は?
新卒制度の良し悪しはガラケーとスマフォの関係に似ている。そして、インターンシップは現在の新卒制度に風穴を通す可能性がある。それはつまり、企業にとってメリットが大きいように見えるが、学生からしても「○○社でインターンした」という履歴が在学中に得られ、それが学生のポートフォリオにつながる可能性がおおきいから。
リクルーター制度はこれまでもあった。ただ、大企業として表だってやれなかったが、ソーシャルの登場で公にしやすい状況が生じた。
日本人の特性として、ソーシャルリクルーティングは特効薬にはなりえない。ただし、ハイスペック人材にとっては、ソーシャルリクルーティングは有用な選択肢の一つ。その意味において、LinkedInは、日本国内での雇用の流動性を生み出すものではなく、グローバルビジネスに飛び出すチャネルである。
HR業界という広い市場の中でどのような多角化を図るのが、生き残りのカギとなります。
エントリにまとめきれないほどの業界の現状分析、ぜひ青山さん力作のスライドをご一読ください。
青山さんのスライド⇒HR Business_20110621 KnowledgeCOMMONS vol.4