ナレッジコモンズでも人気の講師、浅川弘樹さん久々のご登場です。実はこのテーマでのプレゼンは2回目(前回のブログ)。前回とてもとても好評だったので、同じ「税務調査」をテーマに4年ぶりの勉強会となりました。
浅川さん曰く「税務署が本気をだしたら一般市民は勝てません!」とのこと。だからこそ事前の入念なシミュレーションが必要になります。
参加者さんはやはり、経営者(個人事業主を含む)やフリーランスの方がほとんど。ものすごい勢いで質問が飛び交った、ノンストップの3時間半となりました。
抑えておきたい3つのポイント
1. あなたの会社は税務調査の対象になるか?
税務調査には大きく分けて2種類があります。ひとつは、査察部等(通称マルサ)が実施する「強制調査」、もうひとつは一般的な「任意調査」。
前者はもちろん拒否などできません。ただ、よほどのことがない限り普通に経営している会社さんなら前者はないかと。
後者は「任意」だからといって拒否することはできませんが、タイミングの調整はできるそう。
最近のデータによると確定申告している300万社中、税務調査に入られるのは13万~14万社、割合にして約5%。何年かに一度は回ってきてしまうようですが「会社の数や人手の問題もあり、税務調査の頻度は減っているようです」と浅川さん。
組織の規模やフェーズによる目安という観点では、たとえば売上100億円以上レベルの大規模会社なら3~4年に1度、売上/利益が大きく伸びている成長期にある会社なら4~5年に1度、といった感覚値になるそうです。
また、税務署は「おいしくなる(?)と寄ってくる」性質のようで、KSK(国税総合管理システム)で対象企業候補のフラグが立つそうですが、たとえば「安定しない会社」「不正をしている企業の同業者」などにはフラグがたち、調査に入られやすい傾向もあるそう。
2. 税務調査官はどんな人?
税務調査の担当は主に「事務官」と「国税調査官」。
こちらの心構えとして浅川さんによると、「税務担当官と一緒に最終的に承認を得る必要のある『統括調査官』をどう説得するかという感覚で臨んでください」とのこと。担当官に対しては基本、ファイティングポーズをとらずに協業するスタンスなのですね。
担当官の目標は「金額」だけではなく「税務調査の件数」もあります。それを踏まえると、いかに効率よく進めて彼らのニーズを満たすかというポイントも見えてきます。
仮装・隠ぺい行為によって支払う税金に「重加算税」がありますが、「これはできるだけ避けてください!!」と浅川さん。事実上の前科者扱いとなり、融資も受けられなくなる場合があるとのことです。
税務調査のタイミングで特筆すべき点は、7月から数ヵ月の調査は本気(税務署職員の人事では7月が移動直後、いい所を見せたい時期)、逆に6月までの数ヵ月は終戦モードになるとのこと。企業の決算期で言うと、前者は2月~5月決算、後者は6月~1月決算あたりに相当します。
3. グレーゾーン経費の振り分けられ方は?
経費か否かの境界線「グレーゾーン」の振り分けられ方については悩むことも多いのではと思います。なぜそうなるかというと、「税法では、明確に書いていない場合は多いから」と浅川さん。これはあらゆる法律に当てはまることだと思います。
税法が定める経費の要件は、「業務に関連して生じた費用」「生活費でないもの」の2つ。納得いく内容かと思いますが、白黒つけるには「解釈」が絡み、それがことを難しくしています、これを決めるのが税務調査ということです。
たとえば福利厚生目的の「クルーザー」は経費か否かでもめた事例がありました。この時の結論は「否」。理由としては、使用状況の履歴がなく、福利厚生とクルーザーを結びつける社内規程もないということでした。
一方、社長の通勤・移動目的の「フェラーリ」は経費か否かでもめた事例もあり、これは、たとえば社内規定に車両規程があり、旅費精算書等で使用状況がわかり、社長は外車を3台保有していて、そのうちこのフェラーリを社用車としているといった状況だったの「可」となりました。
要は「説得できるだけのストーリーが必要!」ということのようです。
税務調査の心得チェックリスト!
ボランタリー精神旺盛な浅川先生が、税務調査当日の心得についてリスト化してくださいました。これは必見!! 心より感謝申し上げます!
- 基本的には丁寧に、和やかな対応
- 雑談にはなるべく乗らず、極力聞き手にまわる(雑談にも通常、「意図」がある)
- 同業他社の批判・噂は避ける(御社はどう?となる可能性)
- 質問に対する即答は極力避ける(質問の趣旨を見極めるため)
- 分らないこと・不明確なことは、確認の上、回答する旨を伝える
- 事後の回答に際しては、経理担当者とよく相談する
- 資料(コピー)を要求された場合も、経理担当者とよく相談
- 提出したコピーは全て控えをとっておく
- 質問内容はもちろん、調査官と話した内容は全てメモをとる
- 聞かれたことにのみ回答する(聞かれていないことには答えない)
- 聞かれたことに対しては事実のみ回答する(主観は抑える)
- 論理的に話す(つじつまが合わないと疑われる可能性)
- 個人と会社の区分は明確に(例;宴会・ゴルフ)
- 感情的にならない(もし徴発されても)
- 堂々とした態度(もし高圧的な態度をされても)
参加者の声(アンケート結果より)
- 正直、全部ためになりました!
- 「経費/経費じゃない」以外にも、戦う観点がいろいろとあることが分かり、参考になりました。
- 面白く、わかりやすく、また突っ込んだ話までお聞きできて二時間あっという間でした。 その場ですぐ質問できる雰囲気もとてもよかったです。
浅川さんは、独立3年未満の起業家さんのトータルサポートなどを得意とする税理士さん。公認会計士の資格と経験もお持ちのため上場企業の税務のあれこれについても詳しく、さらに税理士としては5年間で延べ360件以上の起業家さんを支援されてきました。
きっと心強いパートナーになってくださると思いますので、起業を検討している方を中心にご興味のある方はぜひホームページをご覧になってみてください!
原田さんによるグラレコはこちら!
浅川さん、本当にどうもありがとうございました!
(山口)
小室の所感
プレゼンのわかりやすさと面白さに定評のある浅川さんの、二度目となる「税務調査の入られ方」、改めて「まだ入られていない経営者さん全員が浅川さんの話を聞けばいいのに。。」と思う内容でした。
とはいえ、アコギなことせずにまっとうな帳簿をつけて、善良でビジネスのわかる税理士さんが顧問にいらっしゃれば、そう不安にならずに済むのもまた事実。浅川さんのプレゼン内容からもそれが読み取れます。
にしても税金たけぇ。。「税金は取られるんじゃない、納めるんだ」といった話をたしか「女騎士、経理になる。」で読んだ記憶がありますが、いや、経営サイドの感覚値としては「苦労して稼いだのに。。」となる心象はとても共感してしまいます苦笑。
POST2020がそろそろ近づいてきた実感もあるので、少しお金のリテラシー関係のテーマをナレコモで強化しようかなと思いましたとさ。