ナレッジコモンズ第51回目となる今回は、50回記念のお祝いモードの余韻にひたりつつ、気持ちを新たに「シニアビジネス」の成功事例について共有する勉強会を企画しました。
60歳以上の女性を40万人以上会員として抱えるシニアビジネスのトップランナー「株式会社ハルメク」100%出資のベンチャー子会社ハルメク・ベンチャーズで、ヘルスケアサービスの新規事業担当役員の松尾尚英さんにご登壇いただき、
- 現場最前線でこそ見えるシニアビジネスの実態・実像
- シニアビジネスの成功/失敗プロセス
について、じっくりお話いただきました。プレゼンもさることながら、ファッションも素敵な松尾さんでありました。
ご好評いただいているグラレコの小野さんも一緒です(なんと心強い)!
シニア女性をターゲットとした雑誌「ハルメク」を核としたビジネス展開
全国紙等を活用して告知を行い、現在の定期購読者数は約21万人。シニア女性向け雑誌では、購読数ナンバー1とのこと。SNS事業なども手掛けていますが、シニア向けということもあり、あくまで紙媒体を起点としているようです。女性にターゲティングした理由は、そもそも世の中の女性誌出版数が多い事からも分かるように、女性は雑誌でターゲッティングしやすかったり、消費をリードする点から、ビジネスになりやすいからだそう。
雑誌「ハルメク」を起点として、カタログ通販、通販商品の店舗販売(神楽坂、福岡天神)、旅行や各種イベント、「がん」や「認知症」をテーマとしたヘルスケア事業などで収益を得るビジネスモデルとのことでした。
ビジネス視点で捉える、日本の高齢者の特徴。
ストック(貯蓄)リッチで、フロー(収入)プア。これに尽きるようです。ちなみに、ハルメク読者のストックはだいたい2800万円くらい。日本人はお金、使わないんですね。では、どんな動機で消費が進むのでしょうか?
- 本人のライフステージ変化(定年、年金スタートなど、住宅ローン完済など)
- 肉体的変化(老眼、体型変化、しわ、物忘れ)
- 本人以外のライフステージ変化(配偶者の定年、子供の結婚、介護・死別)
- 時代性の変化(消費税増税、社会保障の仕組み変化、定年延長、IT環境の変化など)
上記のような節目、潮目がビジネスチャンスと考えています。これらのことを一次情報として捉えるべく、社内シンクタンクで日々リサーチが行われているのだそうです。
かなり広く、深くマーケティングしていらっしゃいます。なぜなら、「マーケティングを間違うと売れない(松尾さん)」からなんです。
ハルメクのビジネスアプローチとは?
R(リサーチ)STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)MM(マーケティングミックス)。新規のアイディアに対して、RSTPMMをスピーディーに組み立て、うまくいくようならそのまま走り抜け、難しそうなら修正するか、中止して次のことにトライする、これを繰り返していらっしゃるとのことでした。マーケティングの基本に忠実であります。
ここまでカスタマーを囲いこめた理由は?
どんなにマーケティングが素晴らしくても、人の気持ちは移ろいやすいもの。そこに対してハルメクさんはこんなアプローチを徹底しています。
「読者をうらぎらないこと。たとえば通販の商品などが届いて、思わず『はずれくじを引いた!』と思われないような、厳選したサービスをつくりあげることに妥協しないこと」、と松尾さん。
それでも問題は起きます。その際は、お詫びのレター、お詫びのお電話等々を徹底的に行うとのこと。逆にお礼の手紙は全社に回覧し、情報共有だけでなく、社員のモチベーション維持に役立てているそうです。信頼構築を何よりも優先させる、そんな姿勢がハルメクさんの企業文化や行動指針として根付いているんですね。
シニア女性向け雑誌で購読数ナンバー1。その理由は、非の打ちどころのないプランニングと、オペレーションにありました。シニアビジネスは難しいという話も聞きますが、こうした成功事例も確かにある、ということに勇気づけられますね!
企業秘密ギリギリのところまで踏み込んだプレゼンテーション、本当にどうもありがとうございました!
2016/8/24
於:株式会社D2C
講師:松尾 尚英 氏
(記 山口)